音楽は、リズム、メロディ、ハーモニーの三つの要素で構成されています。
リズム=拍、メロディ=旋律、ハーモニー=調和。
「歌の上手さ」を決める要素も、この3つだと言えるでしょう。
これは私の生徒たちは、私からよく聞かされている言葉だと思います。
本日は、これらを効果的に学べる課題曲選びについてお話を致しましょう。
レッスンで歌う課題曲を選ぶ上で、私が生徒たちに勧めているのは、
洋楽のカバー曲を歌うことです。
元来POPSは、アメリカを発祥として日本へ入って来た音楽です。
日本へ入って来た当初は、POPSを歌うための指導法も確立されておらず、
異分野であるクラッシックの発声を、無理矢理POPSに当てはめて指導するトレーナーが多くいました。
そのために歌声がどんどんクラッシック色を帯びてしまい、
ギャップに悩み、苦しんだシンガーも多くいたように思います。
日本でのその指導法に疑問を感じたトレーナーが渡米し、
本場アメリカでトレーニングを受け、
その歌い方や指導法を日本に持ち帰ったことによって、日本の音楽シーンもかなり進化しました。
今や「J-POP」「K-POP」は、独自のスタイルを確立しています。
それでもやはり、本場アメリカの、英語の歌詞とリズムで作られた曲を歌うことで得られるものは、本当に沢山あるのです。
それは後に、邦楽を歌う時にも大きな効果を発揮します。
詳しくお話しましょう。
邦楽と洋楽の違い、それは歌詞の言語です。
当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、
その言葉の違いが、ここでの重要な要素なのです。
日本語は通常、一つの子音に一つの母音が合わさって一つの文字を形成しています。
「か」なら「KA」、「さ」なら「SA」というように、子音で始まって母音で終わる言語であり、
その一つの「子音+母音の組み合わせ」が一音節となります。
そのため日本語の歌詞は、文字の数だけ音を必要とするのです。
例えば「きのうは」という言葉なら、その単語一つだけで四音節となり、
「き-の-う-は」と、四つの音を必要とします。
では、英語はどうでしょうか。
英語は元々、リズムの中で話される言語です。
一つの文章の中のどれかの単語が、過去形や未来形に形を変えて文章の長さが変わっても、
それを話す(時間的な)長さもリズムも変わらない、
という特性を持っています。
そして、英語の中で口語的に使われる単語の多くは、一音節又は二音節の短いものがほとんどです。
また単語の中にアクセント(強弱)があるため、一つの音符に複数の音節を乗せることも出来ます。
ですから上述の「きのうは」=「Yesterday」という単語も、
「Yes-(ter)-day」=「タン-(タ)-タン」と、二音で表現してしまうことが出来るのです。
この英語の特性が、音楽に非常に有効なのです。
「き-の-う-は」と「Yes-ter-day」。
決定的な違いは、リズムです。
冒頭でもお話をした、「歌の上手さ」を決める三大要素の一つです。
日本語で「き-の-う-は」と音に乗せようとすると、「タ-タ-タ-タ-」と四音節となり、
それぞれが一つの音符を必要とすると言いました。
かたや英語の「Yes-ter-day」は、二音しか必要としません。
それは裏拍が出るためです。
「Yes-(ter)-day」=「タン-(タ)-タン」の、「ter」の部分は裏拍となり、
裏拍が出ることで、その単語自体も、まるで跳ねるかのようにリズムを持ち始めます。
この「裏を感じること」が歌う上でのリズム作りにとても重要であり、
このリズムがアーティキュレーションを作ります。
洋楽をカバーし、沢山の英語詞を歌う事によって、この部分が自然と養われるのです。
また、裏拍を感じることが出来るようになると、
音程も格段に良くなります。
音程とは音と音との間を指します。
音程の良さとは、「一音一音を正しい高さで出す」ということではなく、
音と音の間の部分、「繋がりの部分をどう表現するか」ということなのです。
間の部分、繋がりの部分は「裏」に当たりますので、
洋楽を歌うことで何故音程まで良くなるのかの理由は、想像に苦しくないかと思います。
このような理由から、私は自身の生徒たちに、洋楽を課題曲として与えることが多いのです。
そしてその練習方法やイヤートレーニングにも効果的なものがあるのですが、
この辺りはまた次の機会に詳しくお伝えしたいと思います。