ボイストレーニングを続けて行くと、日によって調子の「良い」「悪い」が出てくることがあります。
その原因には、その日の体調や心の状態など様々なものがあるのですが、
今日はその歌の調子が悪い時の改善方法についてお話をしようと思います。
歌っていて何だかしっくりこない時、まず一番最初にすべきことは、
楽器で音程を取り直すことです。
ボイストレーニングのレッスンで歌う曲は、ご自身の好きな曲や、よく知っている曲であることが多いでしょう。
そうでなくても、レッスンの中で繰り返し歌うことで、その曲についての理解度は増して行きます。
メロディも歌詞も、覚えてしまっているかもしれません。
ですが、もう一度初心に返って一から音程を取り直してみると、
様々な発見が必ずあります。
高いと感じていた部分が、実はそんなに高い音ではなかったり。
何気なく歌っていた部分の音程が、実はとても高低差があったり。
それが楽器の鍵盤の上で視覚化し、自分で実感出来るようになると、
歌い方が自然と変わります。
「高い音を出すためには」「音程が跳躍している箇所は」、そういう部分はこう歌いなさいと、
日頃のレッスンで言われていることを、その箇所に当てはめて使えるようになるからです。
楽器でしっかりと音を取ったら、次は手拍子と一緒に歌ってみましょう。
ここでの目的は、アクセントの位置とリズムの再確認ですので、最初はメロディで歌わなくても構いません。
手を叩きながら、音程を付けずに歌詞を口ずさむだけでも、とても効果的です。
その曲の拍子が身体で感じられるようになると、リズムがハッキリとわかり始めます。
例えば、唱歌の「ふるさと」。
冒頭の、「うさぎ追いし かの山」の部分を、手を叩きながら歌ってみてください。
「うーさーぎーおー いし」と、「い」の部分が拍と拍の間に入ることが実感できたと思います。
「この言葉は、拍と拍の間に入るんだな」とか、
「この歌詞の、この部分が一拍目に来るんだな」
などと実感出来るようになると、リズム感が良くなります。
リズム感が良くなって、入れるべき休符を、入れるべき場所に正確な長さで入れられるようになると、
その休符に意味を持たせることが出来るようになります。
それが休符を演奏するということになるのです。
また、リズムや拍子を正確に歌えるようになると、
一つ一つの音をどれぐらいの長さを伸ばすのかの、「長音」の部分も丁寧に歌えるようになります。
この音はどれぐらいの長さで、どんな風に伸ばし、どんな風に終わらせるのか。
手を叩き、拍子を感じながら歌ってみて初めて、
自分がいかに「なんとなく」歌っていたのか、実感される人も多いのではないでしょうか。
音楽と数学は似ています。
決まった数の音と、決まった種類の音符しかないのに、
その組み合わせ方次第で、無限にも思える種類の楽曲が出来あがります。
そして、全ての音楽は、必ず楽譜に書き落とせるものです。
楽譜というのは、その曲の図面であり教科書のような役割のもので、
普段、何か曲を歌う時には、自分の中に30%意識出来ていれば良いものです。
あとの70%は、感情のままに歌って構いません。
ただ、もしも「何だかしっくりいかないな」「不調だな」と思う日ががあったら、
この「30%の部分」を見直すことを試してみて下さい。
きっと、あなたの歌は随分と変わっているでしょう。