ボイトレコラム⑫ 「24時間練習する」こと


はじめに



世界的なプレーヤーを輩出するような一流の音楽機関では、

「24時間練習しなさい」と指導するところが多いと聞きます。

 


そしてこれは音楽に限ったことではなく、何かの分野で頂点を極める人は、

一日24時間、意識的にまたは無意識の中で、

日々トレーニングし自分を鍛錬しているのです。

 


ですが私たちは一日の大半、

社会人であれば働き、学生であれば学校で勉強をしなければなりませんし、

 

その行き帰りの通勤通学に時間もかかれば、

食事もし、お風呂にも入り、夜になれば眠らねばなりません。

 

 

では、「24時間練習する」とは、一体どういうことなのでしょうか。

 


リズムの大切さ

 

以前のコラムの中で、リズムの大切さについてお話ししたことがあったかと思います。

(※ボイトレコラム「プロシンガーに必要な技術とは」より)

 

 

ボイトレコラム リズム感が大切

 

それぞれの音楽の「そのジャンルらしさ」を作るのはリズムであり、

 

そのリズムやアクセントを身体に取り込むこと、

そして、その7つのジャンルの歌い方で歌いこなせるようになることが、

 

プロシンガーになるための必要な技術だとお伝えしました。



これは私の約20年のボイストレーナー歴の中で実感していることですが、

リズム感が優れている人は、歌の上達が格段に早い。

 

 

レッスンを始めた時には、特別歌が上手かったわけでもない生徒が、

めきめきと上達し、あっという間にプロデビューを果たしたことが何度かあります。

 

 

彼女たちの共通点は、優れたリズム感を持っていたことでした。

 

 

そしてこの「リズム感」は、

日常生活の中の、少しの意識でトレーニング出来るものなのです。


 

 

リズム感を養うためのトレーニング

発声の基礎ともなる腹式呼吸のためのトレーニングや、

声帯を引っ張り、コントロールする力を養うためのトレーニングなど、

 

日々の生活の中で出来ることは沢山あります。

 

 

その方法を、具体的に見てみましょう。

 


リズム感を養うトレーニング

 

①電車のリズムを身体で感じる

往年のあの大スター達も、このトレーニングをしていたことが有名ですね。


 

電車のリズムを身体で感じ、

その揺れに身体を預けてみたり、

 

そのリズムを自分の中で膨らませ、

セッションのように電車のリズムとの掛け合いを楽しんでみたり。



ボイトレコラム 電車のリズムを感じて


彼らのあの名曲の数々は、

こうした日々の生活で養われた類まれなるリズム感から来ていたのかもしれません。

 

 


②歩く速度にリズムをつける

 

日々の生活の中で、まったく歩かない人は稀ではないかと思います。

 


その距離が短くても長くても、歩いている中にリズムをつけ、

身体で音楽を奏でてみてください。

 

自分の歩幅とそのテンポで、まるでドラムを演奏しているかのように歩き、

もしも状況が許すのならば、少し歌ってみるのも良いでしょう。

 

 

この時は、ミュージックプレーヤーで音楽を聴きながら歩くのではなく、

自分の頭の中に流れる音楽に合わせて歩き、リズムを取るようにするとより効果的です。

 


腹式呼吸のトレーニング  

 

③鼻から二回息を吸い、口から二回息を吐く


これも歩いている時に、簡単に出来るトレーニングの一つですね。


ボイトレコラム 腹式呼吸のトレーニング

 

 

息を吸った時にお腹が膨らみ、

息を吐いた時にお腹がへこむ。

 

この繰り返しを意識し、テンポ良く、

リズミカルに何度も行ってみましょう。

 

 

また、普段の会話の中で滑舌良く話そうとすることも大変効果的です。 

 

 

滑舌良く話そうとすると、いわゆる「お腹から声が出ている」状態になり、

自然と腹式呼吸になっていることが多いからです。 

これも是非試してみてください。 

 


腹式呼吸は、歌う上で大前提となる大切な技術です。

日々の生活の中で、より意識して使っていきましょう。

 


声帯をひっぱるトレーニング

 

高い音を出す時には

 

私の生徒たちにはレッスンの中で伝えていることですが、

コラムの読者の方々のために、先に少しご説明しておきます。

 

 

歌を歌う上で、また特に高い音を出そうとする時には、

「声帯をひっぱる力」が必要になり、

その力をコントロールすることが非常に重要になります。

 

 

声帯をまるで輪ゴムのように引っ張り、

(※実際には声帯周りの筋肉を使って引っ張ります)

 

出す音に合わせてその形を変え、

そこに息を通すことで、

 

初めて正しく、声帯に無理のない状態で音を出すことが出来るからです。

 

 

低い音を出す時のまま、

声帯の形を変えずに息の力で無理やり押し上げるように高い音を出すと、

喉に多大な負担が掛かってしまいます。

 

高い音を出す時は、より注意をしてください。

 

 

ボイトレコラム 高い音は声帯を引っ張って出す



さて、それでは実際のトレーニング方法です。


④声のトーンを上げて話す

 

いつもの自分の声のトーンよりも、少し高めの声で話してみましょう。


女性の場合、相手に違和感を与えない程度であれば、

裏声になっても構いません。

 

 

「裏声を出す=声帯を引っ張る」ことになるので、

先程お話をした、「声帯を引っ張りコントロールする力」のトレーニングになります。

 

 

高いトーンの声で話すと、鼻の通りが良くなり、音の抜けが良くなりますし、

眉が上がり、軟口蓋が上がることで、

声の響きをより感じる事が出来るようになります。

 

 

また、このトレーニングを通じて声帯を引っ張る力が養われ、高い声が出るようになれば、

声帯周りの筋力が鍛えられ、同時に低い音域も広がっていきます。

 


「24時間練習する」ということ


今回は4つに絞ってお話をしましたが、日々の生活の中で意識出来ることは沢山あります。

 

そして、この小さないくつかを毎日少しずつ行うだけでも、

歌の上達に大変効果があるのです。



スクールでレッスンを受けている

その限られた時間だけでなく、


自宅で練習をしている

その限られた時間だけでなく、

 

大切なのは、「それ以外の時間」にどう音楽を意識するか

ということです。

 

 

一日の大半である「歌っていない時間」をどう過ごすかで、

一日の中の限られた「歌っている時間」が、より生きてくるのだと言えるでしょう。

 


音楽即生活

 

音楽即生活であり、生活即音楽です。

これが「24時間練習する」ということの本当の意味です。

 

日常に練習の場は沢山あります。

是非それを意識して生活してみてください。 

 

リューズボーカル&ギタースクール
リューズボーカル&ギタースクール